「水引」と聞いて、皆さまはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
祝儀袋にあしらわれた水引の、伝統的な結び方や色には意味があるということはご存じの方も多いかと思います。 ですが、やはり水引は特別な時だけ触れるもの、という方がほとんどではないでしょうか。

かつて水引製品の主力だった結納飾りの売り上げは、時代の変化とともに縮小しつつあります。 水引細工が皆さまの目にとまる機会は、昔ほど多くはないのが現実です。 結納のような伝統儀式がなぜ必要か、そこに水引がどんな役割を果たしているのか、ご理解いただけるように、作る側が努力しなければいけないと考えています。 しかし、伝統をただ守るだけでは、今の時代を生き残ることはできません。 もっと日常にありふれたクラフトとして皆さまに親しまれることを目指して、今までにないやり方で水引の魅力を伝え、楽しんでいただけるように、さまざまな挑戦をしてまいります。

結ぶ前の素材である「生水引」は、和紙を芯にして1本ずつが作られています。 和紙を細くよって紐状にすることで、簡単にはばらけない丈夫さを備えながら、細工の形も大きさも無限に創造して、直線と曲線の組み合わせを工夫できるところが、水引の素晴らしさです。

300年以上続く水引の産地・長野県飯田市で140年生きてきた老舗として、この水引のように、やわらかな発想力を持って新時代をしなやかに進んでいくことを、心に刻んでまいります。 日本にしかない水引という手仕事の伝統を、次の世代へ受け継ぐことはもちろん、身近な工芸品・装飾品、そして日用品として皆さまの生活に広めていくことが、私たちの使命なのです。